笑いのジャンルが増えるとは

昨日書いたラーメンズについてのテキスト内にある「笑いのジャンル」という事についてもうちょっと詳しく書いてみます。
例えばCLASSICの「マジックマニアとガンプラマニア(仮)」(ビデオ未収録)というネタでは「その道に詳しい人でないとわからないような専門用語をさも日常用語のように話す人を見ると面白い」という一つの笑いの種類を使ったコントであったわけですが、これをコントとして客前でやったのはラーメンズが、つまり小林賢太郎が初めてであると思うのです。これが笑いになると認識し、これだけを笑うポイントとしたコントを作り上げたのは、という意味でなら間違いないでしょう。
これはいわゆる「あるあるネタ」や「パロディ物」とは違うものです。これらはその知識を観客に求めるためまったく知らない人は笑えないのですが、「マジックマニアと〜」ははじめからその知識を要求しないまま笑いを生むコントとして作られているのです。
考えてみたら、一昔前と比べて笑いの種類(またはネタの種類)は激増したと思われます。昔だったら客の前でスケッチブック持ち出して紙芝居見せたり2つのぬいぐるみ出して人形芝居見せることは許されなかったことでしょう。ブリッジで挟まれた短いネタを十数個言うだけで舞台を降りる人を芸人とは認められなかったことでしょう。今は笑えればなんでもアリになっているのです。その中でも例えば「あるあるネタ」の発明は一つの革命でしょう。人間は他人と同じ知識を持つ事・同じ経験をしていた事を認識すると笑う生き物である」ということが分かってからはそれのみをネタとする芸人が誕生したのです。
それに対し漫才というのは基本のフォーマットが決まっているものなので、僕は見ていてあまり芸人の間に「上手いか下手か」以外に差があまり感じられないのです。一組の芸人がやる漫才の異なるネタの間にもシチュエーション以外の大きな差がないように。
このように、僕はなぜか笑いを見るときには「その笑いの構造がどうなっているか」の方に目が行ってしまう癖があるのですが、その意味でラーメンズというコンビは「今までに見たことのないネタ」を見せてくれるので目が離せないのです。一公演に一つは新しい物を見せてくれるわけですから。