SURVIVE STYLE5+ 感想

(以下ネタバレ)(以下酷評)
劇中、小泉今日子が演じるCMプランナーはいいCMのアイディアを思いつく度に手持ちのボイスレコーダーに記録する(そしてそのCM映像が実際に作品内に挿入される)。その場で「シッシッシ…」と笑うことからアイディアに自信を持っているらしいことが分かる。で、完成した「自称オモシロCM」を「こちらの要求したものと全然違う!」とクライアントの製薬会社社長(千葉真一)に言われて一言、「CMってのは面白くないといけないの!消費者にわからないような成分名言われても企業のマスターベーションなの!」と言ってのける。
ふざけんな馬鹿野郎。
てめえの「オモシロ映像」に企業が金出す必要がどこにある。商品の売り上げが見込めないCMに金出す企業がどこにある。ヒトの広告費と放送枠を使って自分だけが面白いと思ってる映像を垂れ流すお前こそマスターベーションしてんだろうが。
と、作中の登場人物同士の言い争いに口を出したのには訳がある。今作の企画・原案・脚本の多田琢は元電通マンで、このCMプランナーに自分を重ねている事は明らかだろう。自分の言い分を小泉今日子の口を使って吐き出しているんだけど、これがそのままこの作品の制作に対する姿勢であるのだ。
まだ15秒かそこらで終わるCMならわかるよ。ストーリーがなくても話の整合性がなくてもキャラクターのその後についてある一切触れてなくてもCMなら分かる。CMは言わば一発ギャグだけで成立するからだ。カッコいい映像だけが15秒続いていれば成立するからだ。でもさ、映画って2時間あるんだよ。2時間CMを見続けられるかってんだ。
いや、まだその「オモシロCM」がポンポンポンっと連続して2時間の映像になってるんだったらまだいいんだよ。でもさ、その「はいここ笑うところ!」という意思が(恐らく)こめられたシーンがことごとく寒い。そしてそれを何度も繰り返す。ああもうやめてくれええと劇場の椅子の上で何度も体をよじらせたよこっちは。「いい年こいたオッサン(岸部一徳)がずっと鳥の真似をしている」とか「帽子を脱いだら河童状のハゲがある」とか「単なるホモネタ」とか何なのよそれ。観客は全員小学生と思ってるのか。
話や設定に対し徹底して「説明」がないのは製作者側の意図なんだろうけど、しかしやっていい「説明不足」とすべきでない「説明不足」があるだろうに。浅野忠信が妻の橋本麗香を何度殺して山に埋めても家に帰ってくると生き返った妻が先回りして家にいる、を「なぜそうなるかを説明しない」のは別にいい。「そもそもなぜ妻を殺したいのか」も別にいい。ええい、このさいその妻が火炎噴射やロケットパンチ(本当に右腕が飛ぶ!)するのも許そう。そういう生き物なんだと納得できなくもないから。でもさ、「何度殺しても生き返り浅野に襲い掛かる妻」ってのはこの作品を見る観客の最大の関心事項であるはずなのに、「ある瞬間から急に妻の狂気が収まり浅野と和解する」とか「何度目かに殺されて以降は生き返らなくなる」のに説明がないってのは何なんだよ。それは妻の生き物としての設定の問題じゃなくて、ここまで付き合わせた観客をほったらかしてなお開き直るだけじゃないのか。