スポーツとしてのM−1。お祭りとしてのドリームマッチ。

「芸人には全て保険がかけられている」という言葉があります*1
テレビや舞台に出る芸人は皆「面白い事」を目的に芸を見せるわけですが、時にはスベることもあるわけです。しかしやりようによっては「人を笑わす事を目的としている芸人がスベっている」という状態で笑われる事もあるわけです。こうして「面白くて笑う」「スベって笑う」の2種類の笑いが混ぜられて今日のバラエティは成り立っているわけです。
しかしつい先日、この「スベって笑う」事が許されない番組がありました。M−1グランプリです。
高額な賞金をかけることで漫才として受けることだけに価値を置いたこの番組では「スベる事」は単に「失敗」でしかなく、そこにスベることの価値はありませんでした。参加者の真剣さ、年に一度の大きい大会である事などを見るに、これはお笑いであると同時にスポーツでもあるように見えるのです。
一方TBSで今年から始まった「ドリームマッチ」。賞金が高額な事と参加者が皆真剣であると謳っていることから第2のM−1を作ろうとしていることは明らかなのですが、しかし蓋を開けてみれば「スベって笑う」事が許容された、どこにでもあるバラエティのフォーマットでした。
「スベって笑う」事がM−1では成立せず、ドリームマッチでは許されるのは何故なのか。おそらく「やりたくてやっているかどうか」に違いがあるのでしょう。「やりたくもないネタをやってスベる」事は滑稽ですが、「真剣やったネタがスベる」のは悲惨な事ですから。
大会の結果でその後の人生が変わる若手芸人によるM−1と、既に多くの仕事を持つためその後が大会の結果に左右されない中堅芸人によるドリームマッチ。二つの大会に大きく温度差が生じることは明らかだったでしょう。500万という賞金ではレギュターを多く抱える中堅芸人を奮い立たせることはできない事も。
ドリームマッチは第2のM−1になることはなく、ただ芸人達のお祭りとして終わったのでした。
・・・とこう書くと面白くなかったように読めますが、いやいや笑いましたよ実際。なあなあにはなあなあの良さがあるわけですし。

*1:今作りました