シティボーイズミックスPRESENTS『マンドラゴラの降る沼』

舞台は未鑑賞、映像でも「NOTA」と「丈夫な足場」と、あと一つか二つかくらいしか観ていないといシティボーイズう私が、知り合いの方々が絶賛しているのを読んで「これは一回観ておかないといけないんじゃないか」という気になってしまったわけです。そして今回の会場は池上本門寺特設テント!チケットは7000円だ!
開場から開演まで1時間ほどテント前でダラダラしてたんですけども、お客さんみんな大人ですね。10代の方なんていなかったんじゃないかしら。そして男性客多し。なんだかどの人も業界関係者に見えてしまうんですが。実際宇梶剛士さんを目撃。
2時間ほどの舞台でコント(?)が10本ほど?ですか。通して思ったのは「つくりが贅沢!」ってことでした。舞台装置がってだけじゃなく、どのコントでも笑いが生まれたらそれは早々に切り上げてすぐに次の展開に進むようになってたんですよね。唯一ひとつのフォーマットを繰り返し使って一本のネタにしたのが「生わかり」であって、他は「それでもっと笑い作れるのに!もうやめるのか!」と思わせるものばかりでした。
例えば「親切な大竹さん」のコント、最後ターゲットがせいこうさんに絞られたあと、大竹さんが今後のために必要な写真やら情報やらを求めるくだり、あの辺なんてもっと掘り下げられたはずなんですよ。でも写真とって娘の誕生日聞いて、抱きしめて終わり。もっと「いかに大竹さんが異常かの説明ツッコミ」だってせいこうさんの台詞に入れられたのに、そこもあっさり。ああこれ小林賢太郎だったらこの倍の時間かけるんじゃないだろうかって思ってました(笑)。
そうだ。説明ツッコミが少なかったんだ。ツッコミ役は大竹さんかせいこうさんなのだけど、どちらも「いま起きたボケがどう面白いか」「いまのボケがどう異常なのか」は説明しない。自転車バーのコントでも大竹さんはただ異世界に迷い込んだ戸惑いを独白するだけで、その異世界の住人に対して「お前の方がおかしい」とは言わない。あれは多勢に無勢という状況だからというのもあるだろうけど。
たとえば関西の芸人さんの漫才なんかで「怒りながらツッコんでいる」のをよく見るのだけど、あれって「自分が絶対に正しい」という立場だからなんですよね。「俺が正しい・お前が間違ってる」という自信があるからこそ相手に対して怒り、間違いを指摘できるわけで。そういう意味で、ボケの人に対して強い態度に出れない設定のコントが多かったことがこの説明ツッコミがないことの理由なんでしょうね。で、僕はこういうのが好きです。遠慮するツッコミ。刑事がビデオ見るネタなんかもそうでしたが。
あともう一つ。それぞれのコントで笑いとなる「異常なもの」は、例えば崖から落ちる人の精神だけで会話している「状態」だったり、刑事が見るビデオだったり、登場人物だったりするわけですけども、それらの「異常レベル」が一本のコントのなかでほとんど上下しないなあという印象でした。異常さが加速しないんですよね。はじめに観客が「異常なもの」を見て、それがどのくらいのものなのかを一旦認識してしまえばもうその後その認識を変えずに済む、と。これがすごく心地よくて。
この心地よさを説明するのが難しくて、どうしてもそうでない笑いを引き合いに出さないと説明できないわけで、そしてそれがまた小林賢太郎の本なのがどうも心苦しいんですけども、例えば「1313*1」だったら「宿泊客の無茶な要求に答えるホテルマン」がその異常なものであったわけですけども、話を聞いていくうちにその要求への答えっぷりがエスカレートしていって「おかげでバツ8」ですなんて、異常レベルが急にぐいっと上がるわけです。こういうの冷めるんですよ僕。「そんなわけねえじゃん」って。
や、そのくらいの異常レベルのコントなんて他にいくらでもあるわけですし、異常レベルが上がるタイプのものだって好きなんですけども、上がるなら上がるで自然に上げて欲しいと思うんですよ。急に上げられると一気にリアリティを失うというか、違和感を感じるというか。とにかく気になってしまうわけです。その意味でこの舞台はとても自然に見ることができたのでした。
ちなみに一番好きだったのは「親切な大竹さん」のコント。いいですよね誰も傷つかない話って。
EDできたろうさんが「住職の前説で・・・」と言ったのをしばらくしてから「前説って言った?」と拾う大竹さん*2。その後も住職に対するツッコミが。「なんであの人最後にパンフレット買ってって言ったんだろう*3」とか。
最後に中村・いとう・銀粉蝶さんを呼び込んでご挨拶。来年の公演の話に「ま、また5年後くらいに」とやんわりと断るせいこうさん。やあ、かっこよかったですよ。是非また。

*1:ラーメンズ第13回公演「CLASSIC」より

*2:会場を提供された本門寺の住職による10分間の説法が開演前にあるのです

*3:言ってました