白ポッチ考
いつからか、巷のフリー雀荘で4枚ののうち1枚ないし2枚に印がついたものを混ぜている店が増えてきた。白ポッチと呼ばれる特殊牌で、リーチ後に一発でそれをツモるとオールマイティとなるルールが採用されているのである*1。
名前の通り、その形状はの中央に小さな点が埋め込まれているものが多いが、牌によっては短い縦線だったり☆マークだったり顔だったりする。個人用に販売されている牌セットにも花牌の代わりに入っていたりするのだから、今や白ポッチはすっかり市民権を得たと言ってもいいだろう。
さて、「白ポッチで上がるとオールマイティ」と言う以上、高め安めのある手ではどちらにしてもいいのかという疑問が持ち上がる。大概の店では「高めを選択できます」と説明されるのだが、ではその選択はどこまでの範囲で行えるのだろうか。また実際には存在しない牌の代わりとして使える以上、「同一牌は4枚ずつ」という麻雀牌の大原則に背く事になるのだが問題は生じないのか。
本稿はこれらの問題について論じるものである。
(牌姿1 高め安めのある両面待ち)
ツモ
ととでは三翻の差が生じる。もちろんをとしたいのだが、これは認められるか。通常の「白ポッチは高めに取れるか」の問題である。少なくとも私は白ポッチを認めながらこれを認めないとする店を知らない。
(牌姿2−1 裏ドラを待ちに含む両面待ちと宣言義務)
ツモ 裏ドラ
のどちらにとっても同じはずだったが、裏ドラを見たら差ができてしまった。これをとすることはできるか?これは「白ポッチをどの牌とするかを宣言する必要があるのか・あるならどの時点でするのか」という問題に帰着するだろう。「裏ドラをめくる前に宣言してください」とする店も存在したが、ならば上の牌姿で宣言を忘れて裏ドラをめくった場合はをとして認めるかは確認しなかった。宣言を義務化している以上「裏ドラを待ちに含む2面以上の待ちで白ポッチツモは宣言がなければ裏ドラがつかない方の待ちになります(無宣言時ルール)」とするべきだろう。さもなくば事実上宣言を忘れた方が得となってしまう。
(牌姿2−2)
ツモ 裏ドラ同じく裏ドラを待ちに含む両面ツモのケースであるが、こちらは裏ドラをめくる前に高め安めが存在する。裏ドラ公開前に宣言を必要としないルールであれば問題ないであろうが、上の(無宣言時ルール)を制定している場合に宣言を忘れたらツモと扱われかねない。当然ツモった方にしてみたら「高めに取るに決まってるだろ」と言いたくなるので、(無宣言時ルール)には「ただし裏ドラ公開前に高め安めがある場合には宣言の義務はありません」などという一文を追加することになる。煩雑になるばかりである。
(牌姿3−1 手役と裏ドラとの選択)
ツモ 裏ドラ
これも実際にあったケース。リーチ後一発でツモった場合である。白ポッチをとすれば跳満・とすれば満貫であるが、多くの店には一発や裏ドラに対しチップを得る権利を設けている。そのため前者で得るチップは1枚オールで3枚・後者では2枚オールで6枚となる。4000点とチップ3枚のどちらを優先させるかはその時の状況やレート、チップの価値によって異なるが、では例えばチップを得たいがために(宣言を義務としないルールであるとして)これをツモと扱ってもよいのだろうか。跳満に取れる手を満貫と申告することは「高点法」に反するのではないか。
(牌姿3−2)
ツモ 裏ドラ
上の(牌姿3−1)との差異は断幺が成立している事。同じくリーチ一発でツモったとする。これも三色と裏ドラの選択であるが、困ったことにこのケースではどちらにとっても同じ跳満である。ならばチップの多い方を選択したいのだが、果たして点数は同じでも七翻になる手を六翻と申告するのは許されるのであろうか。これは高点法だけでは解決できない問題である。
そもそも高点法はチップ等の「点数以外の価値」まで含めて考えられたものではない*2。そのためチップが飛び交う現代のルール上では必ずしも「高点」が意味するものが一つにならないのであるが、ならば現代版の高点法を制定するべきであろう。果たして高点とは、翻数なのか、点数なのか、チップまで含めたいわゆる「収入」なのか。
以上のことから白ポッチと高点法とは相性が悪い事がわかった。白ポッチを認める際には「どの上がり牌に取るかは全て上がった人の好きにしていい」というルールにしてしまうのが最もすっきりした方法なのかもしれないが、しかしそうすると「高めに取って他家を飛ばさないためにわざと低く点数を申告する」という、通常高点法を論じる際によく挙げられる問題がまた生じるのも事実である。白ポッチでの場合だけ「わざと低くする」事を認めながら、それ以外の場合に認めないというのもルールの整合性が取れていないと言える。
(牌姿4−1 5枚目の牌での上がり)
ツモ
一見すると待ちがない様だが、白ポッチをかとすれば上がれそうだ。その際同一牌5枚が暗刻と雀頭として扱われることになるが。さてこれは認められるか。
既にないはずの牌で上がる事を認めないというのであれば、では「既にない」とはどこまでの範囲を見て判断されるのか。手の内で全ての上がり牌を使っているときのみ認めない(4-a)のか、フーロしていない部分だけ(純手牌)で判断されるのか、他家の捨て牌やフーロ、ドラ表示牌まで含めて判断されるのか。例えば他家がとを暗カンした上で待ちのリーチは認められるのであろうか。
また、通常リーチした時点で待ち牌が全て枯れている場合は終局後にチョンボとなるが、白ポッチを認めていればチョンボとはならないのか。白ポッチまで含めて全ての上がり牌が枯れていたらダメなのか。
(牌姿4−2)
ツモ
ダブル役満でしか逆転できないという状況だとして。上の手牌、リーチ宣言牌は数牌であるとする。つまり四暗刻・字一色のダブル役満を狙ったリーチだったというわけ。
さらにタンキで上がった四暗刻はダブル役満とするローカルルールもある。ならばこのを+とすれば合わせてトリプル役満に!
(牌姿4−3)
ツモ ドラ
白ポッチをとすればドラ5であるが。こちらはの他にとが待ちとして存在するためチョンボではないだろう。問題はドラ5枚使いとできるかどうか。
(牌姿5−1 赤ドラとの兼ね合い)
ツモ何の変哲もない手であるが、待ちはである。白ポッチをどちらに取ることもできるだろうが、では思い切ってと見ることはできるのだろうか。
この手ではのみならずだって立派な上がり牌である。白ポッチが「どの上がり牌の代わりにもなる牌」だというのならいいような気もするが、どうだろうか。
あるいは上がった時点でが見えていなかったらよいのだろうか。捨て牌や他家のフーロ、ドラ表示牌になければいいのか。これをだと申告した時に他家から「だったら俺が使ってる」と手の中から見せられたらどうだろうか。
心情的に言えば、赤くないをツモっておきながらこれを赤牌と扱うのには無理があるような気もするのだが。
(牌姿5−2)
ツモ
待ちはとのシャボであるが、残る上がり牌はどちらも赤牌である。今度は正真正銘「赤牌でしか上がれない」手である。これをで上がっておきながら赤牌として使えないというのなら「存在しないはずの4枚目の黒牌」を持ち出している事になる。牌姿4−1での「5枚目の牌での上がり」を認めないというのなら「4枚目の黒牌での上がり」も禁止せざるを得ないのではないだろうか。
(牌姿5−3)
ツモ上の牌姿4−3でも挙げた形である。この白ポッチをとする事が認められたとして、さてその場合にと扱うことは可能であろうか。
通常赤牌は1種につき1枚ずつしかない。確かには2枚存在しないのだが、ならば黒だって3枚しか存在しないのではないか。白ポッチを「存在しない4枚目の黒」とするのが良くて「存在しない2枚目の」とするのがダメというのもおかしな話ではないだろうか。
純カラリーチでも可とするのであれば、いっそのこと「白ポッチは隣の卓から持ってきた任意の牌を上がり牌とできる」とした方がすっきりするのかもしれない。
(牌姿5−4)
ツモ何も問題なさそうな上がり形であるが、上の「白ポッチは隣の卓から〜」のルールを適用するならば、この白ポッチを2枚目のとすることも可能であるはずだ。つまりランクが5である牌を待ちに含む手を白ポッチで上がれば必ず一枚の赤ドラを得るわけである。