古畑オープニングの指折り掛け算

この年末年始はテレビばっかり見て過ごしているんですが、年末に再放送のあった古畑任三郎SPのオープニングでフランス式掛け算について話していたんです。こんな感じのものでした。

例えば7×8を計算するとき。

  • まず両手をパーにします。
  • 左手で7を数えます(2本指が立つはずです)。
  • 右手で8を数えます(3本指が立つはずです)。
  • 両手で立っている指の数を足します。これが十の位です。
  • 両手で曲がっている指の数を掛けます。これが一の位です。

これ、放送では説明がなかったんですが、実際この方式で解けるのは両方の数が6から9までのときだけなんですよね。6×6から9×9までの16通り。なのでフランスをはじめとする諸外国では九九を5の段までしか教えないと聞きます。6×2は2の段をならっておけば2×6と同じでいいわけですし。
ではどうしてこの方法で計算が合うのか。考えてみました。以下二通りの方法で解説いたしますのでお好きな方をどうぞ。

例えば7×8を計算するとき、左手は2本、右手は3本指が立っている。十の位は2+3で5、一の位は3×2で6、これは7×8の答えに一致する。
ここから左右どちらかの数を1増やす・または1減らすことを考える。ここでは仮に右手を1増やすとする。
このとき掛け算は7×8から7×9に変わったわけであるが、その答えがどれくらい変化したかを考えてみることにする。
一般に、掛け算の「×」の右の数を1増やした(または減らした)とき、その答えは左の数だけ増える(または減る)。上の例では56から63へと「7増える」わけである。
さて、ではフランス式掛け算では答えはどれくらい変化するのかを考える。
まず右手の立った指が一本増えるので、十の位は1増える。つまり10増える。
つぎに右手の折れた指は一本減るので、一の位は3×2から3×1へと変化する。これは左の折れた指の数である3だけ減っている。
10増えて3減った、つまり7増えたことになる。この7という数は「10から折れた指の本数を引いた数」、つまり「左手が表す数」に他ならない。フランス式掛け算でも7×8から7×9へ変化する際に答えが7増えることが明らかになった。
逆に1減らす場合においても、また左手の数を変化させる場合においても同様の議論で確かめられる。

a×bを計算する場合、左手でa、右手でbを指折り数えると、
左右の手の立っている指の数は、それぞれa-5、b-5本であり、
左右の手の折れている指の数は、それぞれ10-a、10-b本である。
十の位は立っている指の本数を左右で加えたもの。これは
(a-5) + (b-5) = a + b - 10 であり、
一の位は折れている指の本数を左右で掛けたもの。これは
(10-a)(10-b) = 100 - 10a - 10b + ab である。
よって十の位を表す値を10倍してからそれぞれ加えると、
10(a + b - 10) + (100 - 10a - 10b + ab)
= ab
これは確かにa×bである。