バカリズムの「加速」について R-1ぐらんぷり2009総評

どうして敗者復活戦が休日で決勝が平日なんだろう。ネタバレを見ないように携帯から巡回しないよう注意して大急ぎで帰ってきてその日のうちに録画を見たよ。
一応閉じます。

1.夙川アトム
業界用語ネタって、かつてとんねるずがやっていた「シーアーソイホーガイナー」とか「ツェーマンゲーセン」とかのアレを超えていないとやる意味がない気がするんだよなあ。でもあれももう軽く20年くらい前のことだから、世代が入れ替わって今では夙川アトムのものになってるのかも。ただ単なる逆さ言葉だけじゃないのがいいですね。
ところでこういう逆さ言葉はミュージシャンの世界でから生まれたと堺センセや小野ヤスシがよく主張してるのだけど、そうなの?

2.岸学
敗者復活でやっていた「パンツが見つからない」コントは大昔にどきどきキャンプとしてやっていたのを見たことがあるのだけど(もちろんジャックバウアーでなく)、今回のこれは初見。
最初の音声トラブルと、しゃもじを先に見せての出に客席の拍手がかぶるあたりアンラッキー。あれは拳銃向けて登場→しゃもじ出す、の順が良かったんじゃないかなあ。
友近・なだぎがやるビバリーヒルズのパロディもそうなんだけど、これってつまり吹き替えの声優さん物真似ですよね。この場合は小山力也の真似。似てると思います。
途中の「本当にすまないと思う」を溜めて溜めて結果言えないというあの自己パロディ、初見の人には伝わらないだろうなあ。みなさんこの決まり台詞ご存じですよねってことか。ちょっと早いんじゃないかしら。
ところでなんでネタ中なんども吹き出すんだろう。

3.バカリズム
先日単独ライブ見に行ったんですが、そこで爆発的にウケていたのがこのネタだったんです。決勝でやれば優勝できるんじゃないか、というより結果はともかくもう一度あのネタを見せてくれればと思い続け、準決勝でもやったらしいという情報を得て期待し、ついにゴールデンで、しかもライブで見せた時より細かな点が改善されよりわかりやすくなったバージョンで披露された嬉しさはかなりのものでした。完全にファン目線ですが、ああ良かった。さらに言うなら、その単独ライブのエンディングトークで「用意してたネタが急遽できなくなり、最後に足したネタだったんでウケる自信がなかったんだけど」とも言ってましたが。
宮迫さんが絵の人物の顔を指摘してましたけど、僕は石川県を「こう持ってこう」する男が着てる服がポロシャツである点が好きです。

4.エハラマサヒロ
嫌いじゃないし、笑いはしたんだけど。人間観察系のネタと言っていいんだろうか。でもこんな人いるかしら。
審査員の得点が出たときに客席がどよめいたのは、悪い意味でだよねあれ。

5.サイクロンZ
おお、意味のあるネタを初めて見た。
ところで数年前のR-1準決勝で見たとき「吉本入りが決まったぜ!」とネタ中言ってたんだけど実際は入ってないみたいね。どうしたんだろう。

6.鳥居みゆき
去年鳥居みゆきが決勝に進んだことは一つの衝撃だったのだけど(だって彼女の存在が公に認められたということじゃん?)、こうして今年も見られること、そしてこの一年よくテレビで見たことを考えると、いやあ世の中何が起こるかわからないもんだなあと思います。
審査後にニヤニヤしながら「キャラ作ってません?」と鳥居本人に聞いたヒゲの漫画家は○ねばいいと思う。「これ八百長じゃね?」とわざわざプロレス会場で言うようなもんだ。王様の耳はロバの耳と言いたいなら穴を掘れ。

7.鬼頭真也夜ふかしの会
上手いんだけど、ネタが並列ですよね。本の順番をある程度のブロックごと入れ替えても成立する感じ。
最後のドカベンのとこは、わざわざ袖にハケてまでやるんだったらもっと爆発するのかと思った。普通「ドカベン最初柔道やってた」の方が知識としてマイナーなのに、そのあと「ずっと野球!」と言われても、うん知ってるよってなもんでしょう。

8.COWCOW山田與志
加速はするものの、しりとり歌やスロットマシンのネタをそれぞれ繰り返すことで停滞してるんですよね。
という話をもうちょっと後で書きます。

9.あべこうじ
最近他の番組で見ると「イターリアー!」をやってるんだけど、あれは本当に何なんだろう?まさかここでやらないよなあやってたら決勝まで来れてないよなあと心配した。

10.中山功太
ラリー遠田はああ言ってますが(http://owa-writer.com/2009/02/r12009_7.html)、つまりあるあるネタの中でも上質であるということなんでしょうが。

結果優勝は中山功太。おめでとうございます。


ところで、バカリズムのネタが上手いのはその「加速」っぷりである、という指摘をしたいんです。

都道府県を持つという発想は現実やら常識やらという原点からかなり飛んだもの、つまり原点からの距離が長いわけですよ。文字通り「現実離れ」するわけですね。まずこの飛距離がすごい。
そしてその後も、こう持ってこう・取っ手をつける・キャスターをつけるという具合にどんどん原点から遠ざかっていくわけですよ。決して行ったあと戻ってきたりはしない。足踏みもしない。その加速っぷりが実にちょうどいい具合なんです。
比較するのも悪いんですが、たとえばこの大会の他の参加者で言えば、鬼頭真也はネタの序盤も中盤も終盤もそのボケの飛び具合は変わらない。つまり原点からある程度離れた地点で足踏みしてるわけですね。進んでからは加速しない。
ではCOWCOW山田は加速しているのかと言うと、どんどん原点から離れはするのだけど途中何度も立ち止まるのだ。テニスの得点から違うものになるのはいいのだけど、そのひとつひとつの繰り返しがくどい。

ちなみにバカリズムのネタの中で一番その「加速」っぷりが分かりやすいと思うのは、コンビ時代最後にやった単独ライブ「ピアス」内のネタ「キュルキュル」だと思います。どうでしょう。