映画「ウォッチメン」みたよ

http://www.watchmenmovie.co.uk/intl/jp/(注:音が出ます)
以下ネタバレ。
今年になってからDVDで見た映画は「ダークナイト」と「大日本人」の二本だけだったのだけど、この作品はまさにダークナイトであり同時に大日本人であった。世間に理解してもらえないヒーローの悲哀を描いているという意味で。
明日にも核戦争が始まるかと恐れながら毎日を過ごす冷戦時代のアメリカ。そのため映画のトーンは暗く、目を背けたくなるシーンもはっきり描写する(R-15指定)。ヒーローたちの多くは特殊能力を持たず、戦闘能力が一般の人々よりもやや強い程度の人間である。条約によってヒーロー活動が違法となってから彼らは引退し、仮面を外して生活する。そしてみな、我々と悩みながら生きている。
元ヒーローの一人が殺される事件から話は始まる。「ヒーロー狩り」の真相を追いながら彼らの過去が挿入されることで、彼らの現役時代を知らない観客もよくあるヒーローものの主人公達に置き換えて理解することができる。まるで子供の頃親しんだヒーローマンガの外伝を(あるいは二次創作を)読んでいるかのようだ。そこにはヒーローとしてのカッコ良さも、マンガでは許されるご都合主義もない。ただただ暗く、悲しい。
殺されたコメディアンはかつて仲間を犯そうとし、戦地の女を孕ませた上で殺していたことが明らかになる。事件の真相を追うロールシャッハは罠にはめられ、無実の罪で投獄させられて囚人達に襲われる。およそヒーローらしからぬ現実が次々と映し出されるこの作品は、その意味でスカっとする「ヒーローもの」にカテゴリー分けされるものでない。事実配給会社もそれを知ってか、テレビCMや劇場でのトレーラーでは視覚的に最も現実離れした格好のDr.マンハッタンは本編であれほど目立っているにも関わらずほぼ映らない。
それでも最後まで見続けられるのは、ストーリーの根幹がサスペンスであり、真犯人当てであるからだ。ロールシャッハ同様、我々もこの一件を放っておけないのだ。
最後のあのオジマンの選択は、やはり第二次大戦を終わらせた原爆投下の暗喩なんだろうか。原作ではロールシャッハが実際に投下したことになっているらしいのだけど、ならば彼自身だけがオジマンの選択を許せなかったというのは大きな皮肉だ。
だからこそ、マスクとマント姿と、そして今見ると時代遅れなファッションに身を包んだ人物によるシリアスについていくのは、少しだけ辛い。あとチンピラがなぜかサムライ姿なのも。