三役問題

81種ある中国麻将の役において、それぞれが他の役と複合するか否かを判断する基準は未だに明確でなく、そのため手役表を眺めながら次々と新たな疑問が浮かんでは消えるわけです。というより僕は実際の対局よりもそっちの方が楽しかったりするのですが。
しかしながら、ただたくさんの組み合わせの中から一つ一つを挙げて論じていくのでは効率的でないので、ここでひとつ。次の関係を満たす三つの役に対しその複合するかどうかの判定を分類化してみようという試みであります。

【三役問題】
手役A,B,Cは以下の条件を満たす。
○Aが成立する手は全て、BまたはCの成立条件を満たす。
○Bが成立する手は全て、Cの成立条件を満たす(そのためBとCは複合しない)。
このとき、AとBの両方の成立条件を満たす手はどう判定されるか?

例1:
A=緑一色(88点)、B=清一色(24点)、C=混一色(6点)
とすると、この三役A,B,Cは上の条件を満たす。
このとき、二索二索二索二索三索三索四索四索六索六索六索八索八索八索は緑一色の他に清一色を認めるか?

この問題に対し、以下の4種の判定が存在します。

1、AとBの複合を認める。
2、Aのほかに、BとCの「差額」にあたる手役Dを認める。
3、Aのほかに、Cを認める。
4、Aのみ認める。
(1の場合には、さらに「AとCの条件を両方満たす手」AとCの複合を認めるかどうかで細分化されます。認めるものを1−1、認めないものを1−2とします。)

たとえば上の緑一色の例では1−2と判定されるわけです。
では三役問題の条件を満たす3つの役があったとき、その判定はそれぞれ1〜4のどれになるのか?
これが全ての組み合わせに対して解決されるか、あるいはその「判定の判定」が明確になることが望ましいのでしょうが、とりあえず今回では2の「差額にあたる役D」について考察していきたいと思います。

例2:
A=七対(24点)、B=不求人(4点)、C=門前清(2点)
七対をテンパイした手は、はツモ上がりで不求人を、ロン上がりで門前清を必ず満たす。このためこの三役は上の条件を満たす。

さて、七対の手を見事ツモ上がりした場合、BもCも認められず、なぜか自摸(1点)がDとして代わりに成立します。これは「七対は必ずメンゼンテンパイである」事に起因します。七対と門前清が複合しないのは当然ですが、しかし七対は必ずツモ上がりできるわけではないので、この「ツモ上がりした」という事実、つまりBとCの成立条件の差額だけが認められることになります。
これを式で書くならば、

不求人の成立条件
= 門前清の成立条件 + 自摸の成立条件
=「メンゼンテンパイであること」 + 「ツモ上がりであること」

となります。この最後の行の「メンゼンテンパイであること」だけが認められないのですから、残った自摸だけが認められるということになります。
このAは七対に限らず、全不靠・七星不靠・十三幺などの「メンゼンでしかテンパイできない役」は全て当てはまります。
もうひとつ「差額役D」が登場する例を。

例3:
A=妙手回春(8点)、B=不求人(4点)、C=自摸(1点)
妙手回春とは日本麻雀でいう「ハイテイツモ」のこと。

メンゼンテンパイのまま流局寸前まで進み、ハイテイでツモ上がれば妙手回春の他に不求人も複合しそうですが、この場合はなんと門前清(2点)がDとして複合するのだそうです。
ツモ上がり限定役である妙手回春は自摸とは複合しないわけですから、これも上の式により門前清だけが残ることになります。

例4:
A=双明槓(4点)、B=暗槓(2点)、C=明槓(1点)

これ、明槓2つで構成された双明槓は4点だけなのですが、明槓1つと暗槓1つで構成されると合わせて5点になるらしいのです。これは双明槓の4点に「暗槓と明槓の差額」である1点を加えているという意味でしょう。
さきほどの例2や例3では「差額にあたる役」であったのに対し、今回はそれがないため単純に「BとCの点数の差」をAに加える、ということでしょうか。ならばこの手を上がったとき、この局の結果を記録する際にはなんと書けばいいのでしょうか。「双明槓(4点)+暗槓(1点)=5点」と書いたら「おいおい、暗槓は2点だよ。」と注意されそうですし。かと言って「双明槓(4点)+暗槓(2点)=5点」と書いたら足し算ができない人と思われそうですし。いっそのこと「双明槓(5点)」とだけ書きたくもなりますが、それもやはり同じことですし。
実際のところ、書くとしたら「双明槓(4点)+暗槓(2点)−明槓(1点)=5点」と書くのが正解になるのでしょうが、手役の計算に引き算が書かれることに違和感を感じる人も多いことでしょう。実際に引き算は行われているはずなのに。