「両替してください」という文化

初めてフリーデビューした店はその当時、まだ点数表示機能のある卓はなかった。
そのため配給原点より浮いた分の点棒を右側手前に置くことで他家との点差を表現するという方式を採用していた。点差が知りたいのはたいてい自分より上の相手とのものだから、この方式でもそんなに困らなかったのを覚えている。ちなみに一本場はその浮き分のうち百点棒を一本横向きに曲げて置くことで表現していた。百点棒がなかったら別に何点棒でもいい。これも別に困らない。
こう書くと流局したときの供託リー棒と混ざりそうだと思うだろう。なのでこの店では、なんとリー棒は真ん中に置きっぱなしで次の局に進むという方式だった。二局続けてリーチをかけるとリー棒が重なったりした。でもこれも別に問題なかったのだ。リー棒のおかげでリーチかけていると勘違いされることなどもない。
それと関係があるかわからないが、さらにこの店ではリー棒は両替しないという暗黙の了解があった。これに限ってはメンバーにそうして下さいと言われたわけではないので暗黙の了解と表現するが、ともかくリーチ時に5000点棒や10000点棒を出しても誰も両替しようとしないし、出した本人も誰にも両替を要求しないのだ。
で、やはりこの方式も、まったく問題ないのだった。リーチ者が上がればただ元通りしまうだけだし、流局したら点パイ料の収入があるのでそれと交換すればよい。他家の上がりがあれば、もちろんその高額なリーチ棒で払い、1000点少ないおつりをもらうだけだ。
その店で育った私は、他の店でも打つようになってからその潔癖なまでの「リーチ棒はとにかくすぐ両替する」という躾に違和感を覚えたのだった。両替してもらってすぐ一発ツモなんてとき、その上がりの支払いに使うのは今両替したばかりの高額リーチ棒だったりするのだから。

そういうわけで、リーチしたら両替しなくてはいけないっていうあの文化、やめませんか。いややめなくてもいいけども「絶対にしなくてはいけない」というあの空気はどうなんでしょうか。メンバーもわざわざ「点棒両替ご協力ありがとうございまーす!」なんて言わなくてもさあ。流局間際のリーチだったらもういいじゃんかとか思いませんか。
持ち点を正確にしないと点差が狂うという理由もあるでしょうが、ならせめて500点棒2本リーチはもうそっとしておいてあげてもいいんじゃないでしょうか。