固有名詞か一般名詞か

かつて何度か書いたが、また考える。

人は他の人を「個」として扱うが、人でないものを見たときたいてい「個」としては見ない。アリの群を見てもアリの群として見るだけで、の一匹ずつを別のものとして認識することはそうない。固有名詞で呼ぶか一般名詞で呼ぶか、ということでもある。

  • ウルトラマンは固有名詞だ。セブンもゾフィーも、タロウも80も固有名詞だけど、じゃあそれらと戦う怪獣の名はどうだろう。普通に考えたら獣である以上一般名詞だとは思うのだけど、確かバルタン星人はシリーズに何度も登場し、その度に「また地球にきたのか!」とか「以前よりも強くなってる!」みたいなリアクションがあった気がするのだ。あれってひょっとして、前に来たのと同一人物だと扱われてたんじゃないかしら。別のバルタン星人が来たのかもしれないのに。怪獣を見る一般人にしてみたら群では見ないからそのへん別にいいのかもしれないけど、でもよく考えたら「バルタン星人」ってもう一般名詞そのものじゃないか。「バルタン星から来た人」だぜ。
  • 「およげたいやきくん」の冒頭「まいにちまいにちぼくらはてっぱんの うえでやかれてやになっちゃうよ」を聞いて、いやいや昨日と今日とで焼かれるのは別のたいやきだろうよとツッコみ続けて早幾年。あれっていま考えると、作詞家の人にしてみたらひとつひとつのたいやきを個として見れずに「たいやきってたいやき屋で毎日毎日よく焼かれてんなー」と認識されてたんだろう。であの歌がアニメの映像つきで放送されるにあたって、ベルトコンベアから流れるたくさんのたいやきの中からあの他とは色の違ううろこを持つ特別なたいやきだけがひとつだけ逃げ出すあの映像を目にしてしまうようになるので、当時の子供たちにしてみたらたいやきくんは「個」なんだよなあ。だからこそ「まいにちまいにち」ってのが矛盾に聞こえるわけだ。
  • キャラクターとして扱われ、版権が生じるものはもちろん固有名詞を持つ。キティちゃんは猫だけどもキティちゃん以外の猫とは区別されるわけだ。それは本物の猫があんな姿をしてないからってのもあるんだろう。「本物と違う」というのはキャラクターとしての「個」を形成する大事な要素で、たとえば体がたれただけのぱんだはそれだけでキャラクターになる。でもね、じゃあピングーはなんでキャラクターなんだろう。あれなんの変哲もないペンギンじゃん。

およげ!たいやきくん(DVD付)

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