「トロン レガシー」観た


http://www.disney.co.jp/tron/
以下ネタバレ。
「トロン」(1982)の続編。続編なので「前作みたいなのが見たい」という観客の期待に答えるよう作られている。今回ももちろん登場人物はみな全身タイツだし、デジタル空間は薄暗くて内部から光る。バイクでのヘビゲームも今回は高低差の要素がプラス。これはトロンだ。間違いない。
例えば「マトリックス」(1999)のような仮想現実もの、あるいは死後の世界を描いた「あの世もの」も共通しているのは、この世からあの世へ行くのは意識・精神だけであるということ。意識を失った肉体はこの世に置いたままである。ところがこの「トロン」シリーズでは、デジタル空間に本当に肉体ごと移動するのである。物理的にどういう仕組みなのか、移動した後の肉体はそのままのサイズなのか、作中に辻褄の合う説明はない。野菜や豚の丸焼きを食べるシーンまである。その肉体では通常と同様に消化されるのか、ならば排泄もするのか、そもそもその食物はどこから。説明はない。とにかく移動するのである。その空間で人間が生きられるのかものなのかと難しく考える必要はない。これはデジタルの格好をしたおとぎ話だから。
ストーリーは単純。父を連れて「この世」に帰還することが目的だ。出口が閉まるまでのタイムリミットも序盤に説明される。対立構造も分かりやすく、「いいもん」が乗る乗り物は白く、「わるもん」はオレンジ色に光るので薄暗い空間でのアクションシーンも大変見やすい(敵のアジトにある戦闘機を主人公が奪って乗ると離陸したとたんに光がオレンジから白に変わる!)。ディズニー映画だ。
そういった、普通の映画に必要とされる要素が揃っているとは正直思えない。ただそんなことは別にいいのだ。だってトロンなんだから。薄暗くて全身タイツ。あらゆる服も乗り物も、壁も床も街もみな内部から光る。もうそれでいいじゃないか。映画としての評価をすること自体間違っている。お前は何を見に行ったつもりなんだ。これはトロンだ。
CGや3D映像が大したことないという評価も目にする。おそらく「アバター」(2009)あたりと比べての感想なんだろうけど、つまり現実と見間違えるほどリアルな映像を良しとしているんだろう。それは普通の映画の話であって、これはデジタル空間を描いているわけだから比較にならないだろう。あくまでトロンとしてのリアル。「本物のデジタル空間」なんて誰も見たことないんだから。
いやそりゃ自分だってもうちょっとストーリーに内容のある方が良かったとは思うけど、そこまでを求めるなんて贅沢ってもんだろう。だってこれはトロンなんだから。