よしながふみは白くて止まる

よしながふみは、よく絵を止める。


彼女の描くドラマのほとんどは会話劇である。だからその台詞ひとつひとつが、どういう長さの間で返したものなのかが重要になってくる。相手の言葉に対し即座に返したのか、長い沈黙の果てに返したのか、が。
その時間経過をよしながふみは止めの絵で表現しているのだろう。沈黙したコマを挟むことで会話の間を表すのは別に普通のことだが、彼女はまったく同じ構図の同じ表情の絵が描かれたコマを二つ三つ並べるのだ。普通に考えたら同じコマをいくつ見たって得られる「情報量」は一つ見るのと同じなのだから、普通はこういうふうには描かないだろう。

また、その止めた絵ではほとんど背景は一切描かれない。だから絵が白く、より絵が止まっているように見える。彼女の作品を手に取り、適当なページをパッと開くと、高い確率で白い背景の絵の止まった会話のシーンを見ることになる。そう、会話劇に背景なんていう余計なものは必要ないのだ。

もうひとつ。彼女の作品内で流れる時間の多くは「二人の会話」だ。三人以上での会話シーンはあまり長く続かない。なぜかはよくわからない。これも会話劇であるからか。会話は二人で行うものと考えているのだろうか。

で、これはよしながふみだからなのか。あるいはBL作品はみな白くて止まっているのか。他のBLを読んだことがないのでわからない。

彼は花園で夢を見る (ウィングス・コミックス)

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これはBLではないのだけど。やはり絵は白く、止まっていた。