省略される暴力 強調されない暴力
- 作者: 真鍋昌平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/08/21
- メディア: コミック
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ところで41ページ。気弱な男、砧(きぬた)がパチスロのゴトで逮捕され、「俺のことチクってねえだろうな」とゴトグループの黒幕に詰められるシーン。
2コマ目と4コマ目の砧の顔の変化を見れば「暴力」が省略されていることがわかる。真鍋はこうした話のアクセントをあえて描かないことがよくある。この「スマグラー」でも冒頭、暴力団の事務所を襲撃し、文字通り本当に組長の「首を穫る」*1のだが、いままさに組長が襲われようとするコマが左ページの最終コマで、そこからページをめくるともう切断された組長の首が箱に収まっている。「首を穫る」シーンは省略され、「穫った」結果だけが描かれる。
これは残酷描写を避けているというより、そのようなシーンを強調しないことで「日常に暴力がある風景」を描いているということだろう。だからこそ恐い。細かくその過程を描かれるよりずっと恐いのだ。
*1:さすがに画像はアップしない