省略される暴力 強調されない暴力

真鍋昌平スマグラー」読んだ。

SMUGGLER (アフタヌーンKC)

SMUGGLER (アフタヌーンKC)

闇金ウシジマくん」以外の真鍋作品を読んだのは初めて。こちらもエグい。「殺し屋1」を思い出した。そして「ウシジマくん」と違ってこちらは笑いの要素がない。あまりにも強すぎる二人の殺し屋「背骨」と「内臓」はちょっとマンガチックだったけども。
ところで41ページ。気弱な男、砧(きぬた)がパチスロのゴトで逮捕され、「俺のことチクってねえだろうな」とゴトグループの黒幕に詰められるシーン。

2コマ目と4コマ目の砧の顔の変化を見れば「暴力」が省略されていることがわかる。真鍋はこうした話のアクセントをあえて描かないことがよくある。この「スマグラー」でも冒頭、暴力団の事務所を襲撃し、文字通り本当に組長の「首を穫る」*1のだが、いままさに組長が襲われようとするコマが左ページの最終コマで、そこからページをめくるともう切断された組長の首が箱に収まっている。「首を穫る」シーンは省略され、「穫った」結果だけが描かれる。
これは残酷描写を避けているというより、そのようなシーンを強調しないことで「日常に暴力がある風景」を描いているということだろう。だからこそ恐い。細かくその過程を描かれるよりずっと恐いのだ。

*1:さすがに画像はアップしない