読み終わったのに読み終わらないマンガ

福満しげゆき僕の小規模な失敗」を読んだ。

僕の小規模な失敗

僕の小規模な失敗

主人公は筆者本人。彼がよくわからないままに工業高校に入ったところから始まる。内気で人付き合いが苦手な彼は作中ずっと寂しさを感じ、将来に不安を抱え、布団の中で苦しみ続ける。人生を楽しんでいる人々を見て憎み、しかしそんな自分を蔑み、また苦しむ。最初から最後まで本当にずっとこんな感じ。
人の輪に入れないとか将来に不安を抱えて過ごすとかリア充を何かしらの理由を付けて蔑むことで自己を正当化するとかもう身に覚えが有りすぎて怖くて怖くてなかなか次のページがめくれなかった。自分もこの主人公とそれほど変わらないんじゃないかと。どうしても自分とは別の人種だとは思えないのだ。
この主人公はその後一応マンガの持ち込みを続けたまに掲載もされるので、かなり地味なまんが道であると言えなくもない。知り合った女性とかなりいろいろあった上で、一応結婚をしたところで「終わり」になる。「終わり」とちゃんと書かれたコマもある。
ところがそこからめくった次のページから「しかし人生はつづく」と続きが書かれる。お金がなくなったということで就職をするが長く続かない。新聞配達を始めるがそれも続かない。次第に妻が働きだし、そして再びマンガを書き始める。いくつかの出版社に持ち込みをし、すべてダメだったというところで突然ぷっつりとこのマンガは終わりとなる。
さらに続くあとがき。以下そこから引用。

マンガに出てきた人物のその後のことなどを少し書きましたが、当の僕が現在どうなっているのかというと…コンビニでバイトしております。ガッカリ…。(中略)あまりにミスを連発するので、これ以上店に損失をあたえてはもうしわけない、と思いコンビニの店長に「あの…向いてないみたいなので辞めさせてください」と言うと、何か優しさ込みのお説教みたいのをしてくるわけですよ。それが僕の痛いところをついてくるもっともな話だったので、なんだか悲しくなってボロボロ泣いてしまったんですよ。そして「全くそのとおりです。すみませんでした…ガンバリます…」なんて言って帰ってきたんですよ。そのあとひさしぶりに死にたくなりましたね。「死にたい」を連呼しました。

震えた。
なんてことだ。暗い人生を続いたその後には栄光が、いや栄光とまではいかなくても今ではすっかり平穏な生活になりましためでたしめでたしということになると思うじゃないか。最後に主人公は報われると思うじゃないか。ちっとも変わらないまま現在でもこの主人公はこういう生活を続けているということか。この主人公の人生はこのまままだ継続中だということか。マンガって普通最後のページまで読んだらもうそれで終わりになるもんなんじゃないのか。読み終わったのにまだ読み終わらないなんてそんなのアリなのか。